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好色の戒め
丹羽文雄「好色の戒め」(一九八一年)集英社文庫

 風俗小説に何故今更のように惹かれるのか自分でも良くわからない。解説にあるように風俗小説に思想性がないというのは単なる誤解だが(小説内で自己主張を繰り返す司馬遼太郎作品とか、あるいは物語におけるすべての葛藤を小説内で説明してしまう上田早夕里『華竜の宮』のような作品が現代人に受けるということは逆に言えば行間を読ませるという描き方は「わかりにくい」あるいは「独りよがり」という評価に行き着かざるを得ないのかもしれないが)、それにしても難しい用語を一切使わない小説スタイルではある。今となっては過去その時点での描写の迫力が筆者を惹きつけるのかもしれないが、どうもそればかりとも思えない。丹羽の小説には一切ノスタルジーがない。もしかしたら、それがその理由なのか、あるいは?
14.11.15 11:29 コメント(0)